龍泉寺は、岡山市北区下足守に位置する日蓮宗最上教総本山の寺院で、特に木村武山による仏画で知られています。この寺院は、奈良時代の天平勝宝年間(749〜757年)に報恩大師によって創建されたと伝えられており、古来より磐座(いわくら)信仰の霊地として、また修験道の修行場として多くの信仰を集めてきました。
龍泉寺は、江戸時代には天台宗の寺院でしたが、備中高松領主の花房氏の影響で日蓮宗に改宗しました。その後、明治時代初期に承進院日護聖人によって再興され、昭和26年(1951年)には日蓮宗最上教派の本山となり、「最上本山 御瀧 龍泉寺」と改められました。現在の建築や石垣のほとんどは、日護聖人の時代に再興されたものです。
龍泉寺は、古来より龍王山の西麓に位置し、龍神を水の神、雨乞いの神として、また稲荷信仰を農耕の神、豊作の神として信仰してきた霊場です。寺院には、最上位経王大菩薩(最上様)をはじめ、八大龍王(水の神様)、鬼子母神(子供の守り神)、三面大黒天が祀られています。
龍泉寺の境内には、いくつかの重要な施設があります。これらの施設は、江戸時代末期から明治時代にかけて造られたもので、その後、日護聖人の手によって再整備されました。
龍泉寺の境内には、八大龍王を祀る「龍王池」があります。この池は、古代から龍神を水の神として信仰する場所であり、八大龍王は人々の願いに応じてさまざまな姿に変化して救済するとされています。龍王池の周囲には湿地が広がり、トキソウやサギソウなどの希少植物が自生しています。
龍泉寺は、岡山県立自然公園に指定されており、四季折々の美しい自然が楽しめます。春にはコバノミツバツツジが咲き誇り、秋にはイロハモミジの紅葉が美しく境内を彩ります。龍王池周辺にはハッチョウトンボなど多くのトンボが生息し、自然を愛する人々にとっては絶好の散策場所です。
新年開運祭は、毎年1月1日から15日にかけて行われ、参拝者の開運や多幸を祈願するための行事です。
初午祭は、2月の初午日に行われる祭りで、五穀豊穣や商売繁盛を祈願するための祭事です。この時期にご本尊である最上位経王大菩薩が特別にご開帳されます。
八大龍王祭は、4月の第3日曜日に行われる水の神様である八大龍王を祀る祭りで、龍王池の前で祭事が執り行われます。
お滝祭りは、毎年7月第4日曜日に行われる夏季大祭で、龍泉寺の最も重要な行事の一つです。神輿が滝の中に入り、祈願旗が浄められる場面は、多くの参拝者やカメラマンを引き寄せます。
身代地蔵尊祭は、10月の第3日曜日に行われる祭りで、地域の人々の安全や健康を祈願するために行われます。
御火焚大祭は、12月の第2土・日曜日に行われる祭りで、一年間お祀りしたお札やお守りを焚き、家内安全や無病息災を祈願します。
龍泉寺に伝わる「龍王池伝説」は、吉備津彦命の時代にまでさかのぼります。この伝説によれば、楽々森舎人が岩をうがって水を湧き出させ、その水が龍王池となりました。この池は、八大龍王の御神体として今も信仰されています。
龍泉寺の境内では、「龍泉寺の自然を守る会」が湿地の保全活動を行っています。龍王池を中心とした豊かな自然環境が保護され、訪れる人々に美しい自然景観を提供しています。
龍泉寺のモミジは、自然に発芽したものを植栽したもので、現在では千本を超える成木に育っています。紅葉の時期には、隠れた名所として多くの観光客が訪れます。