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ベンガラ館

日本唯一の赤色顔料産業の歴史を辿る

ベンガラ館は、岡山県高梁市に位置し、赤色顔料「ベンガラ」をテーマとする博物館です。この館は、日本で唯一のベンガラ産地として知られ、長い歴史を誇る吹屋地区にあったベンガラ工場跡を活用して開設されました。ベンガラ産業の歴史や製造工程を知ることができる貴重な場所です。

ベンガラ館の概要と歴史

ベンガラ館は、明治時代のベンガラ工場の建物と製造用器具を忠実に復元し、ベンガラの製造工程を詳しく紹介しています。実際に使用された古い製造用器具が展示されており、訪れる人々に当時の製造現場の雰囲気を伝えています。また、隣接する陶芸館では、ベンガラで絵付けされた九谷焼、伊万里焼、京焼などの陶磁器が展示されており、ベンガラの多様な用途とその美しさを鑑賞することができます。

吹屋地区とベンガラ産業の発展

ベンガラは、1707年(宝永4年)に吹屋で初めて生産され、日本全国で使用される赤色顔料として広く知られるようになりました。この顔料は、江戸中期から江戸末期、明治、大正にかけて、吹屋地区を大いに繁栄させました。ベンガラ館は、明治時代のベンガラ工場を復元し、当時の製造工程やその過程で使用された器具を展示しています。

ベンガラ製造の工程と技術

ベンガラは、赤い砂のように見えますが、土の中にそのまま存在するわけではありません。ベンガラは、原料の磁硫鉄鉱(じりゅうてっこう)をローハ(緑礬)に加工し、さらにそれを焼いてベンガラに仕上げるという複雑な工程を経て作り上げられます。ベンガラ館では、この製造工程を詳しく知ることができ、ローハを焼き、石臼でひき、水の中で酸を抜き、乾燥させる過程を見学することができます。

ベンガラ産業の興隆と衰退

吹屋で初めてベンガラが生産されて以来、吹屋は日本有数のベンガラ特産地として栄えていきました。1877年(明治10年)に開催された第1回内国勧業博覧会では、「吹屋ベンガラ」が一等褒状を受け、その名声は全国に広がりました。吹屋には、かつて5~6か所のベンガラ工場があり、多くの人々がこの地で働き、生活していました。

しかし、第二次世界大戦後、化学肥料の製造過程で生産される安価なベンガラが市場に出回るようになり、吹屋でのベンガラ製造は次第に衰退していきました。最終的に、1974年(昭和49年)には、吹屋でのベンガラ製造は完全に終了しました。

ベンガラの特性と用途

ベンガラは、古来より使用されてきた赤色顔料であり、防腐・防虫の効果もあります。別名「紅殻(べにがら)」とも呼ばれ、その名はインドのベンガル地方に由来するとされています。吹屋で生産されたベンガラは、吉岡銅山の捨て石である硫化鉄鉱石から偶然発見されたもので、その後、良質な鉱石の発見が続き、吹屋はベンガラ産業の一大中心地として発展していきました。

ベンガラ館の見どころ

ベンガラ館は、明治時代のベンガラ工場を忠実に再現しており、当時の製造過程や使われた道具を間近で見ることができます。展示されている道具は、実際に使用されていたものであり、訪問者は当時の工場の雰囲気をリアルに感じることができます。また、館内では、ベンガラがどのようにして製造されていたのかをアナウンス付きで学ぶことができるため、知識を深めながら見学することができます。

吹屋の歴史的価値とベンガラ産業の継承

ベンガラ館は、吹屋地区の歴史とともにベンガラ産業の価値を次世代に伝える重要な役割を果たしています。昭和47年の銅山の閉山後、吹屋でのベンガラ製造は終焉を迎えましたが、その歴史と文化はベンガラ館を通じて今も息づいています。この博物館を訪れることで、日本の伝統産業の一端に触れることができ、またその重要性を再確認することができます。

ベンガラ館は、歴史を感じながら学べる場所として、多くの訪問者に親しまれています。吹屋地区を訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。日本の赤色顔料産業の歴史とその技術に触れることで、豊かな知識と感動を得ることができるでしょう。

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ベンガラ館

津山・美作

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