吹屋ふるさと村郷土館は、岡山県高梁市成羽町にある歴史ある郷土館です。この郷土館は、吹屋地区の伝統的な家屋を今に伝え、地域の文化と歴史を学ぶ貴重な場所となっています。
吹屋ふるさと村郷土館は、1879年(明治12年)に建築された入母造りの二階建て町家です。この家屋の主屋は、土台と外側にクリ材、縁や敷居にサクラ材が使用されており、その他の部分には松の巨材が使われています。1979年(昭和54年)、当時の当主から旧成羽町がこの建物を借り受け、現在は一般公開されています。
吹屋ふるさと村郷土館は、岡山県高梁市成羽町で弁柄業を営んでいた片山家の分家として建てられたものです。明治期に片山家本家の向かいに分家として3棟が建設され、それぞれ北片山、中片山、角片山と呼ばれていました。このうちの一つ、角片山が現在の吹屋ふるさと村郷土館として保存されています。
角片山は片山嘉吉が1874年(明治7年)から1879年(明治12年)にかけて建築した家であり、石州大工の手によって作られました。蔵の2階に残る板図には、「島根県宮下、石見國那加郡、第1大区小拾六区、浅利村大工棟梁、島田綱吉、明治十二年卯三月三十日」と記されており、嶋田綱吉によって建築されたことが確認されています。
片山嘉吉は、本片山の総支配人を務めており、角片山に分家した後も引き続き本片山の弁柄を卸す仕事を担当していました。このように、角片山は弁柄産業において重要な役割を果たし、吹屋地区の経済と文化の一部を形成していました。
郷土館として一般公開されている角片山は、妻入の入母屋型で、ベンガラ格子が特徴的な吹屋の代表的な家屋です。明治7年ごろから企画され、良質な材木が本片山の材木倉から運ばれ、宮大工の手によって完成しました。家屋の2階には、6畳ほどの「隠し部屋」と呼ばれる部屋があり、このような構造が当時の家屋の特性を伝えています。
吹屋ふるさと村郷土館は、歴史的価値が高く、地域の文化と伝統を保護し伝える重要な施設です。ベンガラ産業で栄えた吹屋地区の象徴ともいえる建物であり、訪れる人々に当時の暮らしと風景を感じさせます。
吹屋ふるさと村郷土館は、周囲の歴史的建造物とともに観光名所となっています。郷土館の周辺には、西江邸や広兼邸、旧片山家住宅など、ベンガラ産業に関連する建物が点在しており、訪れる人々に吹屋地区の歴史と文化を深く理解させる役割を果たしています。
郷土館の内部では、明治時代の建築技術や生活様式を感じることができる展示が行われています。また、吹屋地区の歴史的背景やベンガラ産業の発展について学ぶこともでき、地域の歴史に触れることができます。