臥牛山は、岡山県高梁市にある山岳で、大松山(おおまつやま)、小松山(こまつやま)、天神丸山(てんじんのまるやま)、前山(まえやま)の4山を総称して呼ばれています。この山岳は岡山県百名山のひとつであり、高梁川上流県立自然公園の一部を成し、備中松山城が所在する場所としても知られています。古くから「松山(まつやま)」とも称され、別名「城山(しろやま)」や「御城山(おしろやま)」としても親しまれてきました。
臥牛山の最も高い部分は天神丸山で、標高約487メートルを誇ります。北から南へと連なる山岳地帯には、大松山(約470メートル)、小松山(約420メートル)、前山(約320メートル)の4つの山頂が並び、それぞれが特徴的な景観を形成しています。これらの山々は、高梁川の東岸に位置し、高梁市街地を三方から取り囲むようにそびえ立っています。
臥牛山は暖帯自然林と温帯林が交錯する地域であり、中国地方特有の多様な植生が見られる場所です。山腹にはモミやアカマツ、アラカシ、ウラジロガシ、ヤブツバキなどが生育し、自然林が多く残されています。また、タカハシテンナンショウ、キビザクラ、アテツマンサク、チトセカズラなどの特殊植物も観察でき、豊かな自然が保たれています。さらに、臥牛山には野生のサルが古くから生息しており、1956年には臥牛山サル生息地として国の天然記念物に指定されました。
臥牛山は中世から近世にかけて、砦や城郭が相次いで建造された場所であり、その遺構が現在も残されています。特に小松山にある天守は江戸時代に備中松山藩の藩庁となった松山城であり、現存する山城の中で最も高い場所に位置する天守閣として知られています。松山城は、日本三大山城のひとつに数えられており、臥牛山全体が大要塞の様相を呈していたことが記録されています。
「臥牛山」の名称は、山の形がウシが腹ばいに伏し、草を食べている姿に似ていることから名付けられました。江戸時代前期には「松山」の名が城下町の総称として用いられるようになり、それに伴い山名は正式に「臥牛山」と改められました。
臥牛山には、古くから野生のサルが生息しており、昭和29年には臥牛山野猿保存会が発足し、本格的な餌付けが開始されました。これにより、臥牛山は「臥牛山自然動物園」として一般公開され、昭和31年には国の天然記念物に指定されました。サルの生息地は国有林を主体とし、約2ヘクタールの広さがありましたが、後年には入場者数の減少やサルの生息状態の悪化により、平成3年(1991年)に閉園となりました。
臥牛山自然動物園の閉園後も、サルの群れは約160頭が形成され、指定区域を中心に周囲を遊動しています。臥牛山の豊かな自然環境は今も保たれており、訪れる人々にその魅力を伝え続けています。