阿智神社は、岡山県倉敷市本町にある鶴形山の山頂に位置する神社で、倉敷市の鎮守として古くから親しまれています。鶴形山からは倉敷美観地区を一望できる絶好のビュースポットであり、境内には能舞台や蓬莱思想に基づく古代庭園が広がっています。また、推定樹齢300~500年の県指定天然記念物「阿知の藤」が見どころの一つです。
阿智神社は、倉敷美観地区の一角にある鶴形山の山頂に鎮座し、創祀1700年を超える歴史を持つ古社です。航海の安全を司る宗像三女神を主祭神として祀っており、地元では「藤戸のお大師様」として親しまれています。境内には日本最古の蓬莱様式の磐坐(いわくら)があり、古代の庭園や「阿知の藤」などの自然美が楽しめます。
倉敷市中心部に位置する鶴形山は、古代から「亀島」「鶴形島」とも呼ばれ、この地に住み着いた阿知使主(あちのおみ)の一族が庭園を築いたことが、阿智神社の始まりと伝えられています。かつて、現在の倉敷市周辺は海域であり、交通の要衝として栄えていました。そのため、海上交通の守護神である宗像三女神が祀られるようになったと考えられています。
境内には「鶴亀様式」と呼ばれる古代庭園があり、その中には「天津磐境」などの磐座が点在しています。また、「斎館」の庭には陰陽磐座や水琴窟が設置され、静かな佇まいが訪れる人々を魅了します。他にも能舞台や芭蕉堂、絵馬殿といった文化財も見られます。
阿智神社の本殿北側に位置する「阿知の藤」は、推定樹齢300~500年の古木で、日本一の大きさと古さを誇ります。この藤は倉敷市の市花に認定されており、県の天然記念物にも指定されています。毎年5月3日から5日にかけて行われる藤まつりには、多くの参拝客が訪れ、見事な藤の花を楽しみます。
阿智神社は、倉敷市の古名「阿知」に由来する総鎮守の神社です。『日本書紀』の応神記によると、阿知使主が韓国から17県の人々を率いて帰化し、この地に住み着きました。彼らは養蚕や絹織、縫製、鉄文化などの先進技術を伝え、地域の発展に大きく貢献しました。
また、神功皇后が三韓征伐の途中、宗像三女神に祈願した際、三振りの剣が雷鳴とともに天空から輝いて降り、この地に妙剣宮(妙見宮)として祀られたと伝えられています。これが阿智神社の始まりとされています。
阿智神社は、商売繁盛、交通安全、美容健康、芸能上達、海上安全のご利益があるとされています。
鶴形山(つるがたやま)は、岡山県倉敷市の中心部にある標高40メートルの小高い山です。この山は別名を妙見山、阿知山とも呼ばれ、古くから地域の信仰の対象となってきました。鶴形山は、東西約500メートル、南北約250メートルの広がりを持ち、周囲は平地で、倉敷市街地のランドマークとして親しまれています。
鶴形山の山上には、倉敷の総鎮守である阿智神社が鎮座しており、境内周辺は鶴形山公園として整備されています。この公園内には、日本一の藤棚を誇る「阿知の藤」があり、毎年春には多くの観光客が訪れます。また、山上からは古代の遺跡や鎌倉時代の銅鏡が出土しており、かつては航海安全を祈る祭祀が行われていたと考えられています。
鶴形山の別名「妙見山」は、山の西側にある真言宗観龍寺に祀られている妙見宮に由来します。また、南麓には誓願寺や本栄寺といった歴史的な寺院も点在しており、古くから信仰と文化の中心地として栄えてきました。現在では、鶴形山隧道が山の西部を貫通しており、交通の利便性も向上しています。