倉紡記念館は、岡山県倉敷市の倉敷アイビースクエア内に位置する、倉敷紡績の企業博物館です。1888年(明治21年)に倉敷紡績が創業した際、原綿の貯蔵用倉庫として建設されたこの建物は、現在、国の登録有形文化財としてその歴史を伝えています。
倉敷紡績(現クラボウ)は、1888年(明治21年)に創立されました。初代社長に大原孝四郎が就任し、翌年には江戸時代の倉敷代官所跡地に、当時最も近代的な紡績工場が操業を開始しました。この工場は、倉敷の産業発展に大きく貢献しました。
倉紡記念館は、1969年(昭和44年)、倉敷紡績の創立80周年を記念して設立されました。当初は社員教育を目的としていましたが、1971年より一般公開が開始されました。1973年には、記念館を含む倉敷本社工場一帯が「倉敷アイビースクエア」として複合観光施設としてオープンしました。
現在の倉紡記念館の建物は、原綿倉庫として建設されたもので、当初は2棟の建物でしたが、明治30年前後に増築されてコの字型の建物となりました。木造一部煉瓦造の2階建てで、屋根は瓦葺きです。この建物は1998年12月11日に登録有形文化財に登録され、今もその歴史的価値が認められています。
倉紡記念館は、歴史的価値が評価され、さまざまな遺産認定を受けています。1998年には文化庁より登録有形文化財に、2007年には経済産業省より近代化産業遺産に認定されました。さらに、2017年には文化庁の日本遺産に、2023年には日本労働ペンクラブより日本労働遺産に選ばれました。
倉紡記念館は、5つの展示室で構成されています。第1室から第4室は、クラボウと日本の紡績産業の歴史を年代順に紹介しています。第5室では、創立から現在までの歴史を年表や映像で振り返ることができます。
第1室では、明治期の紡績機械や創業当時の文書を展示しています。倉敷紡績の創業とともに、日本の紡績産業がどのように発展していったかを知ることができます。
第2室では、大原孫三郎が掲げた労働理想主義に基づく資料を展示しています。クラボウの発展期における労働環境の改善や社会貢献活動が詳しく紹介されています。
第3室では、昭和の戦前・戦中期の資料や、棟方志功による襖絵などが展示されています。この時代の厳しい経済状況とクラボウの取り組みを知ることができます。
第4室では、戦後の復興とともに、クラボウの事業の多角化と海外進出について展示しています。日本万国博覧会での展示物や、最新技術の紹介も含まれています。
第5室では、明治から現在までのクラボウの歴史を年表や映像で振り返ることができます。社内報の閲覧システムも設置され、当時の出来事や社内の様子を知ることができます。
倉紡記念館の建物は、創業当時の原綿倉庫の名残を今に伝えています。原綿の重さに耐える分厚い床板や、積み上げられた原綿を壁の結露から守るための桟など、当時の工夫がそのまま残されています。
倉紡記念館は、クラボウの創業から現代までの挑戦の軌跡を、貴重な文書・写真・映像・模型などで紹介するだけでなく、未来に向けた礎としての役割も担っています。この記念館を通じて、過去の歴史を学び、未来への展望を考えることができるのです。
倉紡記念館は、倉敷アイビースクエア内のアイビー学館や倉敷美観地区にある大原美術館との共通入場券が販売されています。これにより、倉敷の産業と文化を一度に楽しむことができ、倉敷の歴史的な魅力をより深く理解することができます。