総社市まちかど郷土館は、岡山県総社市に位置する郷土博物館で、1910年(明治43年)に建てられた旧総社警察署の建物を利用しています。この建物は総社市内に残る唯一の明治洋風建築であり、現在は地域の歴史や文化を紹介する貴重な施設として活用されています。
この建物は、1910年に総社警察署として建設されました。総社警察署はもともと真金村にありましたが、総社町への移転に伴い、この洋風建築が新たに建てられました。1959年(昭和34年)に警察署が別の場所へ移転した後、建物は一度取り壊しの予定でしたが、その価値が再評価され、保存されることとなりました。そして、1988年(昭和63年)に「総社市まちかど郷土館」として新たに開館し、現在に至ります。
2006年(平成18年)には、この建物が国の登録有形文化財に登録されました。これは、近代の警察署建築として非常に貴重なものであると評価されたためです。特に、木造二階建ての構造や八角形の楼閣風の入り口は、明治時代の建築様式を色濃く残しており、その保存状態も優れていることが評価されました。
総社市まちかど郷土館の建物は、花崗岩の布基礎(土台)の上にレンガ積みと木造の二階建ての構造を持ち、寄棟造の桟瓦葺きで仕上げられています。特に目を引くのは、八角形状の塔屋風の入り口で、このデザインが建物全体に独特の趣を与えています。玄関部分の楼閣風の仕上がりは、明治時代の建築技術の粋を集めたものと言えます。
館内には、総社市でかつて盛んに作られていた備中売薬や阿曽の鋳物、い草製品など、明治から昭和にかけての伝統産業に関する資料が展示されています。1階には、総社市内の観光名所や歴史を紹介する歴史コーナーや古民具コーナーがあり、映像資料や写真を通じて地域の歴史を学ぶことができます。2階には、備中売薬や阿曽の鋳物、イ草、畳表製品など、約1600点に及ぶ展示物が詳しい説明と共に陳列されています。これらの資料は、総社の伝統産業がいかにして発展し、地域経済に貢献してきたかを物語っています。
総社市まちかど郷土館は、商店街通りの一角に位置しており、その周辺には旧家や豪商の屋敷跡が点在しています。これらの建物群は、かつての繁栄を今に伝え、訪れる人々に総社の歴史を感じさせます。また、小さな公園が整備されており、市民の憩いの場として親しまれています。
まちかど郷土館のすぐ裏手には、備中国の神々を一堂に祀った「備中国総社宮」があります。この神社もまた、地域の歴史と文化を色濃く反映した場所であり、郷土館と併せて訪れることで、総社市の歴史をより深く理解することができます。
総社市まちかど郷土館は、1910年に建設された旧総社警察署を活用し、地域の歴史や文化を広く紹介する施設です。国の登録有形文化財として保存されているこの建物は、明治時代の洋風建築の貴重な例として、また地域の伝統産業を伝える場として、多くの人々に親しまれています。訪れる際には、周辺の旧家や備中国総社宮も併せて探索し、総社市の歴史と文化を存分に楽しんでください。