倉敷市立自然史博物館は、岡山県倉敷市に位置する博物館です。倉敷美観地区に隣接しており、倉敷市立図書館や倉敷市立美術館とともに並んでいます。1983年11月3日に開館し、自然史に関する多様な展示を行っています。館内は3階建てで、4つの常設展示室と1つの特別展示室があり、岡山県の動植物や世界の昆虫、化石、隕石などが展示されています。
倉敷市立自然史博物館の設立は、1977年頃から始まった市庁舎の移設に伴う跡地利用に関する市民からの意見を受けたことがきっかけです。1980年に文化施設として利用する方針が発表され、旧倉敷市水道局庁舎を改造して自然史博物館として活用することが1982年3月2日に正式に決定されました。翌年の1983年11月3日に博物館は正式に開館し、その後も増築や記念事業が行われています。
現在の建物は開館から40年以上が経過しており、老朽化が進んでいます。これに伴い、倉敷市福田町古新田にあるライフパーク倉敷敷地内への新築移転が計画されています。2023年度には移転に係る基本計画「ライフパーク倉敷リニューアル及び新自然史博物館整備基本計画」が策定される予定です。
2023年3月31日時点で、博物館には地学分野で約1万1545点、植物分野で約32万693点、昆虫分野で約60万1582点、動物分野で約11万2662点の一次資料が収蔵されています。また、図書が1万3797点、逐次刊行物が4万6053点登録されています。収蔵品の約9割以上が寄贈品で構成されています。
エントランスホールでは、アニマトロニクスのナウマンゾウの親子「ナウママ」と「パオ」が来館者を出迎えます。壁面にはケサイなど先史時代の哺乳類の彫刻が飾られており、学習コーナーやミニ水族館も併設されています。
第1展示室では、岡山県の地形や地史、化石に関する展示が行われています。第2展示室では、岡山県に生息する動植物の剥製や石灰岩台地のジオラマが展示されており、県内の自然環境について深く学ぶことができます。
第3展示室では、世界中の昆虫の標本が展示され、昆虫の多様性や生活環境について学べます。第4展示室では、岡山県や倉敷市の植物に焦点を当てた展示が行われており、市民の生活との結びつきも紹介されています。
特別展示室では、自然史に関する特別展やその他の企画展が開催されており、定期的に新たなテーマで展示が行われます。
倉敷市立自然史博物館では、自然観察会や博物館講座、自然の標本なんでも相談会、動物研究会、むしむし探検隊、博物館まつりなど、さまざまなイベントが企画されています。また、県内の他の市町村へ出向いてのイベントも行われ、地域社会との交流を深めています。
岡山大学や岡山理科大学の学生を対象とした博物館実習や、倉敷市内の中学校の生徒を対象とした職場体験の受け入れも行われています。また、学校教育機関に対しては化石セットや昆虫標本の貸し出しも行われ、教育支援に力を入れています。
2005年には、むしむし探検隊の活動中に参加者であった高校生が、岡山県真庭市でハムシ科の新種「ミヤマアザミカミナリハムシ」を発見し、2020年に学術論文が発表されました。こうした発見や研究成果は、博物館の重要な役割の一つとなっています。
倉敷市立自然史博物館は、自然史に関する豊富な資料と展示を通じて、地域の自然や文化に対する理解を深める場として広く利用されています。今後の移転計画を含め、さらなる発展が期待されるこの博物館は、引き続き多くの人々に親しまれ、学びの場として重要な役割を果たし続けることでしょう。