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井原市立 平櫛田中 美術館

(いばら しりつ ひらくし でんちゅう びじゅつかん)

井原市立平櫛田中美術館は、岡山県井原市に位置する美術館で、近代彫刻界の巨匠である平櫛田中(ひらくしでんちゅう)を題材にした作品を保存・展示しています。この美術館は、2023年(令和5年)4月18日にリニューアルオープンし、名称が井原市立田中美術館から井原市立平櫛田中美術館に変更されました。これにより、より多くの人々に平櫛田中の素晴らしい作品や彼の生涯を伝える新たな芸術交流の拠点として生まれ変わりました。

美術館の歴史とリニューアル

創立とその歴史

井原市立平櫛田中美術館の歴史は1969年(昭和44年)、平櫛田中を顕彰するために開館した「田中館」に遡ります。この美術館は、昭和58年に井原市の市制30周年を記念して新館が建設され、井原市にゆかりの深い平櫛田中の作品を保存し、展示する施設としての役割を果たしてきました。

2023年4月18日、リニューアルオープンした際には、名称を「井原市立田中美術館」から「井原市立平櫛田中美術館」に変更しました。このリニューアルにより、美術館は鉄筋コンクリート3階建てとなり、延べ床面積は約3600平方メートルに拡張されました。床面積は以前の1.6倍に、収蔵庫は2.6倍に増加し、市民ギャラリーなども新設されました。

リニューアル後の美術館の魅力

リニューアルされた美術館では、平櫛田中の107歳までの生涯をたどる珠玉の作品が一堂に展示されています。また、田中と関係の深い日本美術院の作家や、平櫛田中賞を受賞した現代アート作家の作品も紹介されています。さらに、代表作である≪鏡獅子≫の原寸大パネルや、スマートフォンで360度様々な角度から鑑賞できるAR鏡獅子も登場しました。

3階には、田中が数々の名作を作り出した東京上野桜木町のアトリエが再現され、当時の面影を偲ばせる展示がなされています。美術館前には田中の作品を配した公園「田中苑」があり、エントランスの大きなガラスウォールから四季折々の景色を楽しむことができます。

平櫛田中の生涯と作品

平櫛田中の経歴

平櫛田中(ひらくしでんちゅう、1872年2月23日 - 1979年12月30日)は、岡山県後月郡西江原村(現・井原市西江原町)に生まれ、広島県福山市で育ちました。田中家に生まれ、後に平櫛家の養子となりましたが、旧姓の田中を通称として用いていました。彼は日本を代表する彫刻家として、高村光雲、荻原碌山、朝倉文夫らと並び、近代日本彫刻界に多大な貢献をしました。

平櫛田中は写実的な作風で知られ、彼の代表作として知られる「鏡獅子」をはじめ、数々の木彫作品を生み出しました。晩年には東京都小平市で創作活動を続け、107歳という長寿を全うしました。彼の作品は井原市立平櫛田中美術館や小平市平櫛田中彫刻美術館に所蔵されています。

代表作とその意義

平櫛田中の代表作には、「鏡獅子」や「烏有先生(うゆうせんせい)」、「五浦釣人像」などがあります。特に「鏡獅子」は、国立劇場のロビーに展示されている彩色木彫で、田中が昭和11年から20年をかけて制作した大作です。彼はモデルとなった6代目尾上菊五郎を観察するため、歌舞伎座に何度も足を運び、その姿を忠実に再現しました。

また、「五浦釣人像」は、茨城県北茨城市の五浦海岸で釣りをする岡倉天心をイメージしたブロンズ像で、福山駅南口にも同名の像があります。これらの作品は、彼の卓越した技術と観察力を示すものであり、彫刻界において非常に重要な位置を占めています。

平櫛田中の名言とエピソード

座右の銘と田中語録

平櫛田中は、作品だけでなく数々の名言を残しています。特に有名なものに「不老 六十七十ははなたれこぞう おとこざかりは百から百から わしもこれからこれから」という言葉があります。これは、田中がたびたび揮毫していた書の一節であり、彼の長寿とその精神力を表しています。

また、「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」という言葉も、彼の座右の銘として知られています。これらの言葉は「田中語録」として今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

材木のエピソード

平櫛田中は、創作活動に必要な材木を大量に所有していました。彼は、いつでも制作に取り掛かれるようにと、金銭に余裕がある時に材木を買い溜めていた結果、30年以上続けて制作できるほどの材木を所有していたといいます。これは、彼が常に新しい作品を生み出すことに情熱を注いでいた証拠であり、その創作意欲の高さを物語っています。

井原市立平櫛田中美術館の見どころ

展示内容とアトリエの再現

美術館内では、平櫛田中の珠玉の作品のほか、彼が使用していた道具やアトリエの再現展示が行われています。特に、上野桜木町にあった田中のアトリエは、彼の創作活動の中心地であり、その雰囲気を今に伝える重要な展示となっています。また、AR技術を駆使した「鏡獅子」の展示もあり、スマートフォンを使って360度様々な角度から作品を楽しむことができます。

田中苑と四季折々の景色

美術館の前には「田中苑」と呼ばれる公園が広がり、田中の作品が配置されています。エントランスの大きなガラスウォールからは、四季折々の美しい景色が楽しめます。この公園は、美術館を訪れる人々にとって、芸術だけでなく自然も楽しめる憩いの場となっています。

井原市立平櫛田中美術館は、平櫛田中の作品を通じて、彼の生涯とその創作活動の軌跡を知ることができる貴重な場所です。ぜひ、リニューアルされた美術館を訪れ、平櫛田中の世界に触れてみてください。

Information

名称
井原市立 平櫛田中 美術館
(いばら しりつ ひらくし でんちゅう びじゅつかん)

倉敷

岡山県